剣道時代 2002.4より引用

稽古においては「一期一会」を心得るべし

相手がどんなレベルの方であっても全力を尽くし、子供であっても決していい加減な稽古をしてはならない。下座からかかる場合はベストさえ尽くせば問題はないが、自分が上座で元立ちに立つ場合は十二分に心がけたい項目だ。

元立ちに立つ場合でも「稽古をさせていただく」という気持ちこそが大切なのはすでに述べたとおりで、その相手との稽古が「一生にこれ一度きりしかない」という「一期一会」の気持ちで対するべきだ。相手の方が「この人とまた稽古がしたい」と思ってくれるような稽古ができれば満点である。これは口で言うほど容易なことではない。

稽古後、相手が挨拶に来られたりコメントを求められたりすることがあるが、ここが要注意である。調子に乗ってペラペラと技術的なことを口にして、その団体の指導と食い違った場合、目も当てられない。相手がそこの指導者にも指摘されているであろう「極端に基本から外れている欠点」を見つけた場合以外は、技術的な部分に踏み込むことをせず、「褒めること」「励ますこと」「感謝の念を伝えること」に留めておくべきである。無論、何度かの稽古で互いの意気・気心が知れてきた場合はこの限りではないが、その場合でも、その団体の指導と食い違うことだけは言わないのがマナーである。